論文レビュー: Inaccuracy of traffic forecasts
"Inaccuracy of traffic forecasts and cons estimates on large transport projects"
Mette K. Skamris and Bent Flvbjerg
Transport Policy, Vol. 4, No. 3, pp. 141-146, 1997

大規模交通事業における需要予測および事業費積算の不正確性に関して。
デンマークの先生が1997年に書かれた論文で、
昨年、大学の先生から教えていただいたもの。

書かれた時期はやや古いけど
おそらく大きくは同じ傾向が続いているだろうと思われる。


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論文の要旨としては
自国および他国の大規模交通事業(鉄道・道路・橋梁・トンネルなど)について、
①事業の実施承認時に計算された交通需要予測の値および事業費と
②事業が実施されて供与開始したのちの実際の交通量および事業費
との比較を行った結果から、
・事業費が計画時よりも50%~100%ほど超過する事業が多い (※1)
・交通量が計画時よりも20%~60%ほど少なくなる事業が多い (※1)
という傾向を指摘し、(※2)
交通量の過大予測が不適切な予算配分を招く恐れがあると指摘するもの。

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※1 事業承認のために実施される実施可能性調査(Feasibility Study)では誤差10%以内の精度が要求される、と会社の先輩から聞いたことがあります(文書として明記はされていないと思う)

※2 論文では予測の難しさを認めながらも、その予測誤差が過多ないし過小の一方に偏っていることから単なる「予測の難しさ」の問題ではないと指摘しています ←2013/1/11追記

僕もこれまで交通量予測の仕事をしてきた。
残念ながら事実として、交通量の予測は「(少ないよりは)多い値を出す」という意思が
特に途上国の事業者(公共事業省など)には働いているように思う。
(計算には様々な仮定を与えるためその過程である程度の操作が可能)
政治的な背景などもあり事業実施がすでに既定路線になっているケースが多く、
事業実施の議会承認をスムーズに得るために「多めの」交通量予測が好まれる傾向。
また同じく議会承認を念頭に、事業費もできるだけ安く抑えるよう(やや無理をしてでも)
という傾向があるように感じた。なのでこの論文で述べられている傾向は正であると思う。

気になるのは
・2013年現在に置き換えて再検証するとどうなるか(論文公開から16年が経過)
・大規模事業に限らない各種規模の場合の検証結果はどのようなものか
・近年よく取沙汰される民活事業の場合にはどのような傾向が出るのか
関連論文は既に出ているだろうから、今度調べてみよう。

あと、もう少し身近なところで実は一番気になっているのが、
自分の携わった事業について同じような比較をしたらどんな結果が出るかということ。
まだ実現された案件はないけど、実現されたら比較してみよう。怖いけれども。



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現場から離れて勉強をすると決めたので、勉強をちゃんと頑張れるように、
また現場で頑張っている仲間たちに少し刺激になるような発信ができるように、
勉強したことをちょくちょく発信していくことにしようと思ったのでした。
企画倒れにならないよう続けていきたいと思います。
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by kan-net | 2013-01-10 23:04 | 勉強・見学
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