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【ハリキリ通信#004】そしてカラチ
2010年7月15日
カラチ(パキスタン)ホテルにて

前略、計たった三通にしてよもやの廃刊も囁かれた本通信であるが、ふらりと立ち寄った日本で読者達の熱い声援を受けたのに気をよくして復活。約11ヶ月ぶり、ずいぶんご無沙汰でした。今夜あたり、ハリキリ通信の話題が花金の夜を席巻している様子が目に浮かぶ。

久々の通信、舞台はカラチ。パキスタン・イスラム共和国の古都にして今なお国内最大の商都として君臨する大都市。道行く男たちは皆一様に髭もじゃ、気温は40度で湿度は80%という「熱気むんむん」を具現化したようなこの地に二ヶ月間(渡航二回)いて何事もないはずがない。

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7月2日、約一ヶ月ぶりにカラチへ戻ってきた。容赦なき高温多湿、そこはかとなく漂うカレーの香り、満載にして街中を駆け巡るきらびやかなバス群、、紛れもないカラチである。ここでまた一ヶ月か、よし今回はもっと日本のコンサルとして気概の高いところを…などと物思いにふける僕に、再開を果たした友人たちは容赦なかった。開口一番「Welcome back! How was the trip to Japan!?(おかえり!どうやったジャパン旅行!?)」。いや帰国なんですけど…。口ごたえしようにも、彼らの満面の笑みと抱擁には閉口せざるを得ない。

愉快な連中である。ローカルスタッフは隙を見てはやってきて最近あった「面白い話」をしてくれるし(先日の話は「友人にマンゴーをあげようとしたら、あいつマンゴーアレルギーなんだと!信じられるかいハハハ!」)、邦人へのサービスが長い専属運転手は時折おもむろに「ソウソウ、ココデス。…アホンダラ!」と得意の日本語録を披露してくれる。市街地で見知らぬ強面の男たちが寄ってきて、すわ一大事!と思いきや「俺の写真を撮れ」(ウルドゥ語でよくわからないけど)だった。まことに愛すべき連中である。

といって彼らをまるっと丸ごと愛そうにも風習の違いという壁は高い。打合せに二時間遅れておいて謝罪の念を億尾にも出さないどころか「さあさっさと終わらせて帰ろう」という威風堂々とした態度には辟易させられたし、ランドリーに出した衣服に油性マーカーで部屋番号を書き込むというのは洗濯の概念を根本から覆す革命的試みであるとしか言いようがない。もはや愛や希望ではカバーしようのない現実的な差異であり、これはいつ如何なる状況下でも心朗らかに寛容を保つための修行の一種なのだと思うことにしている。

―さてまだまだ彼らの、パキスタンの紹介したい顔は数え切れないほどあるのだが、今回はここで話題を変えて特に気になる治安のことを少し紹介する。

誰もが漠然と抱くイメージそのままにパキスタンは安全な国とは言えない。毎日の新聞には「昨日の犯罪と事故」という枠があって、カラチ市内の地図を示しながら場所、発生状況、被害者の数と生死などが定型で整理され情報提供されている(今日の情報は2件の銃殺、1件の拉致、1件の強盗、1件の遺体発見、2件の交通事故死、3件の逮捕)。状況は年を追うごとに悪くなっているそうで、我々調査団が外出する際には常に警察の護衛がついている。ずいぶん物騒だがそれでもカラチは未だ安全な方で、北部や北西部ではタリバンによるテロが断続している。愛すべき人々の国ではあるが、これもまた見つめなくてはならないパキスタンの現実の一面である。

そしてますます悲しいのは人々が自国の治安について一切の希望を失っていることである。治安はこれからも良くならないしこんな危険なところへ外国人が来るべきではない、と話す者までいた。さらに人々は、行政は無能であり、警察は悪質であり、そこらへんのショップは悪徳商人で、人ごみの中には犯罪者がいると思っている。ここまで徹底的に自国を信頼できないで、この先に明るい未来を描くのは難しい。今回の仕事を通して、本筋の交通事業での貢献は勿論のことながら、人々の心のどこかにあるこの暗く重い部分に少しでも光と和らぎをもたらしたいと思うようになった。どうすれば良いのかは、はっきりとはわからないけれども。善き人たちの、悲しい国である。

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…ああ、また長々と考えて長々と書いてしまった。こんなだから次号を書く気が起こらないのだが、書いてしまったのだから仕方ない、送ってしまえ。次号が五文字で終わっても文句を言わないでください。

次号ありえるトピック
・ありえないバス
・ありえた雨
・私とウルドゥ語
・そしてピクニック

稚拙な文章にお付き合いいただきありがとうございました。

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写真① ナイトカラチ:
滞在中のホテル屋上からの一枚。けっこう大都市でしょ。

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by kan-net | 2010-07-16 07:17 | 通信
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